コラム「安心で楽に暮らそう」第5回目 住まいのバリアフリー 玄関

矢作聡近影

福祉環境アドバイザー矢作聡

整然としていたり、生活感にあふれていたり・・玄関は、その家の顔と言われます。
介護リフォームの依頼があると、そのお宅へ訪問調査に伺いますが、最初に入るのが玄関です。そしてそこには、色々な情報があるのです。
たとえば福祉用具のタイプや杖の種類で、歩行能力が予測できますし、靴を見れば外出の頻度もわかります。玄関は家への入口であり、社会への入口でもあるわけです。
ではその大切な入口にある、バリアの話をしましょう。

玄関のバリアといえば、まず浮かぶのは上がり框の段差です。マンションなどではフラットな仕様のものも増えてきましたが、戸建て住宅では2~30cmの高さがあるものが普通です。この上がり框の改善策として多いのが、段を増やして段差を小さくする方法です。一段増やし、高さが半分になるだけで楽になったという声をたくさん聞きます。また、スペースにゆとりがあれば、壁沿いに腰かけ用の板を設置し、座って靴の脱ぎ履きを行い、お尻をずらして出入りを行うのもおススメです。玄関ではあまり見かけませんが、2~3cmというわずかな段差は、段差としての認識が弱くなり、逆につまずき易くなるため注意しましょう。

玄関ですることは靴の着脱、車いすへの移乗などですが、もう一つ、室内と屋外を行き来する際の、身体の準備をする場所でもあります。そこでポイントとなるのが明るさと温度です。
人が行動する際の五官からの情報は、視覚 87%、 聴覚 7%、 嗅覚 3,5%、 触覚 1,5%、味覚 1% と言われていて、目から入る情報がいかに大切かがわかります。しかし、目も歳と共に老化がすすみ、老眼や白内障、明暗に対する順応速度の衰えなどが出てきます。ですから、玄関の明るさには充分配慮することが大切です。
次に温度ですが、急激な温度変化が身体に悪いのは周知の事実。玄関は冷暖房の整った室内と屋外との中間で、身体を慣らし準備する大切な場所なのです。ということは、お年寄りが靴の脱ぎ履きに時間がかかるのも、逆に好ましいことと言えるかもしれません。

扉の断熱性能‥玄関部での熱の出入を軽減、熱中症予防のためには換気窓を備えた扉も

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ハンドル部の操作性‥施錠や扉の開閉がらくにできる

ハンドル部の操作性‥施錠や扉の開閉がらくにできる

さて、玄関について書いてきましたが、こんな事例もあります。
ご主人が車いすを使うようになったので、玄関の段差部分にスロープを付けたい、という依頼がありました。しかし伺ってみると、奥様の体力に合わせたゆるやかな勾配のスロープを付けられるほど、玄関スペースは広くありません。昇降機を設置するか、居室脇にスロープを作るかの二者択一になりました。玄関に昇降機は、ちょっと物々しいとのことで、駐車スペースの端にスロープを付け、居室から出入りするようにしました。この方がいざという時、速やかに屋外に出られるというメリットもあります。出入口=玄関という観念にしばられず、介護をする人、受ける人双方が、安全で楽ちんな住まいであって欲しいということです。

車いすやベビーカーに配慮した引戸‥開口部の広さが必要な場合に選択

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階段とスロープ‥段鼻や勾配がはじまるところには目印も忘れずに

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